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業界研究「調剤薬局編」

薬剤師と聞いて、多くの人がまず思い浮かべるであろう調剤薬局。大手チェーンの調剤薬局がM&A等で拡大戦略を推進するなか、まだまだ中小規模の調剤薬局も大きな存在感をみせています。業態の規模によって、求められる働き方やキャリアアップの仕方もさまざま。調剤薬局業界全体の動向や市場規模などを理解して、将来設計をしていきましょう。

薬局業界の最新動向

概要

医薬分業は「量から質」の時代へ

かつて、上限70%といわれていた医薬分業率は、2015年度にその大台を突破。2016年度は71.7%となりました。
これを受けて厚生労働省は、規制改革会議資料のなかで「今後は、医薬品の適正使用に資する医薬分業の評価を量から質(疑義照会や在宅医療への参画など)に転換していく必要がある」として、量的な水準は満たしたとの見方を示しています。
地域別に見ると分業率が高い都道府県は1位が秋田県86.9%、次いで神奈川県81.8%、新潟県81.6%。反対に、分業率が低い都道府県は1位が福井県49.4%、次いで和歌山県51.9%、京都府54.6%と、医薬分業の進捗には地域差があります。

注意していただきたいのは、医薬分業が進んでいない=ほかの地域に比べて医療の質が劣っている、というわけではありません。

たとえば、薬局が少ない地域では、高齢患者の利便性を考慮して院内処方を続けている場合があります。また、病院によっては、医師と薬剤師が連携し、患者の治療や臨床研究に生かすためのデータを集めやすいとして、院内調剤を行う考えもあります。
かつては薬価差益で医療機関がもうける“薬漬け医療”の温床として問題視された院内処方ですが、これまでの診療報酬改定や薬価改定によって是正されていくのに合わせて、近年では見方も変わってきているのです。

次に、数値で業界を見ていきましょう。
調剤薬局の店舗数は前年度から0.9%アップの5万7,784件。市場規模は7兆8,000億円とも言われています。調剤薬局で働く薬剤師も年々増加しており、厚生労働省の「平成26年医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」によれば、2014年末時点で全薬剤師28万8000人のうち16万1000人、つまり半数以上を占めています。

薬局数の推移(全国)

展望

「かかりつけ」を担い、地域住民の相談役に

いわゆる「団塊の世代」が75歳以上になる「2025年問題」に代表されるように、日本の高齢化は世界に類を見ないスピードで進んでいきます。そこで、日本では高齢者が住み慣れた地域で自分らしい暮らしを最期まで迎えられるようなサービス提供体制、「地域包括ケアシステム」の構築に取り組んでいます。

調剤薬局についても、「対物業務から対人業務へ」を掲げ、2015年10月に厚生労働省が「患者のための薬局ビジョン」を策定。地域包括ケアシステムの一翼を担うために、2025年までにすべての薬局がかかりつけ機能をもつことを目指すとしています。
ビジョンの要点は下記の通りです。

「かかりつけ薬剤師・薬局」

「かかりつけ薬剤師・薬局」には大きく分けて3つの機能が求められます。
(1)服薬情報の一元的・継続的な管理
(2)24時間対応・在宅対応
(3)かかりつけ医をはじめとした医療機関等との連携
です。薬剤師かかりつけの算定要件には認定薬剤師であることが含まれており、調剤薬局でキャリアアップをめざすなら、当該資格の所得は必須といえるでしょう。

調剤薬局についても、「対物業務から対人業務へ」を掲げ、2015年10月に厚生労働省が「患者のための薬局ビジョン」を策定。地域包括ケアシステムの一翼を担うために、2025年までにすべての薬局がかかりつけ機能をもつことを目指すとしています。ビジョンの要点は下記の通りです。

「健康サポート機能」

政府の提唱する「日本再興戦略」における、予防・健康管理推進の新たな仕組みづくりとして、「薬局・薬剤師を活用したセルフメディケーションの推進」が掲げられています。 調剤薬局には上記の「かかりつけ薬剤師・薬局」機能に加えて、地域住民による主体的な健康の維持・増進を支援する「健康サポート機能」を担うことが期待されています。

具体的には、
▽医薬品等の安全かつ適切な使用について助言、
▽健康の維持・増進について相談を受け必要に応じて適切な専門職種や関係機関に紹介する
▽実施した健康サポートの内容を地域の調剤薬局に情報発信し、取り組み支援等を行う
となっています。 こうした取り組みを行ったうえで、プライバシーに配慮した相談窓口の設置など各種要件を満たした調剤薬局は、「健康サポート薬局」として認定を受けることができます。 健康サポート薬局の認定は年々増加しており、2017年7月時点で432件。各社の関心の高さがうかがえます。

「高度薬学管理機能」

地域患者のニーズによっては、がんやHIVをはじめ、各種難病の治療薬について、致死的な副作用のコントロールや併用薬との相互作用など、高度な知識・技術と臨床経験をもつ薬剤師による「高度薬学管理機能」が必要となります。

すべての調剤薬局に求められる機能ではありませんが、近隣に専門医療機関がある場合などは、医師の処方計画を理解したうえで、患者に対する適切な薬学管理を行うとともに、医療機関へのフィードバックできる体制づくりが必要となります。

各学会等が提供する専門薬剤師の認定など、高度な知識・技能を取得すること、最新の薬物療法に対する知見を深めることが求められるでしょう。

「ICT化を活用した服薬情報の一元的・継続的把握の推進」

近年、スマートフォンの普及などICT化が進展に伴い、電子版お薬手帳のシステムが開発され普及が進んでいます。電子版お薬手帳のメリットとしては、▽携帯やスマートフォンを利用するため携帯性が高く、受信受診時に忘れにくい、▽データ容量が大きく、長期にわたる服用歴の管理が可能、▽服用歴以外にも、システム独自の健康データが管理可能といったメリットがあります。

一方で、個人情報の保護や、異なる開発主体での操作性の違いなど、課題も残っています。

調剤薬局業務内容

調剤薬局業務の柱は「調剤」と「服薬指導」です。2014年度調剤報酬改定では、調剤前の「確認業務」が必須になりました。なお、服薬指導した内容は薬歴に記載して一定期間保管する義務があります。2015年初頭に業界を騒がせた薬歴未記載問題は、これを怠ったまま調剤費請求を行なっていたことが原因です。

また、業界全体が「かかりつけ薬剤師・薬局」化へと進んでおり、在宅患者訪問薬剤管理指導など在宅医療への取り組みを実施する調剤薬局が増えています。
患者の服薬情報の一元管理、残薬チェック、OTC医薬品の取り扱い、健康相談への対応、調剤薬局薬剤師の業務は多岐にわたりますが、近年では【展望】の章で述べたように「対物業務から対人業務へ」が基本。地域住民の相談役としてコミュニケーション能力もこれまで以上に重要な要素となっていくでしょう。

調剤薬局の業態規模ごとの特徴とキャリアパス

傾向

中小規模 大手チェーン
給与
設備
IT化
転勤がない・少ない
残業が少ない
個人の責任・裁量が大きい
教育体制
育休・産休などの体制整備

調剤薬局業界は、2016年度の売上高ベースで大手10社の占有率が15%程度と、中小規模の調剤薬局が大きな割合を占めていることが特徴です(くわしくは調剤薬局 売上高ランキング(2017年版)を参照)。
ドラッグストア業界における大手10社の売上高ベースの占有率が約63%であることと比較すると、その差は一目瞭然。いわゆる「パパ・ママ薬局」と呼ばれる個人経営から、全国1,000店舗を超える大手チェーンまで多様な経営規模の調剤薬局が乱立しており、同じ業務でも設備やシステムによってフローが異なることも珍しくありません。
薬剤師は自分のキャリアデザインに合わせた職場選びが重要になります。

中小規模の調剤薬局の特徴とキャリアパス

中小規模の調剤薬局を選ぶうえでのメリットとしては、まず転勤がない、あったとしてもほぼ近隣地域のみで展開しているので影響が少ない、ということが挙げられます。給与についても、大手チェーンの調剤薬局と比べて高い傾向があります。これは人材獲得の難しい「地方」かつ「小規模」になるほど、高収入での募集の割合が増えていきます。

人材に余裕のない調剤薬局も多いため、早い段階から管理薬剤師など責任のある仕事ができる可能性がある一方で、急な休みの対応や有休取得が難しい職場も一定数あるといえます。設備投資や福利厚生についても経営者次第であるため、場合によっては古い機材で業務にあたらなければならなかったり、育休などの福利厚生が整っていない恐れもあります。

将来、独立開業などを考えている場合は、経営者との距離感が近く、コミュニケーションがとりやすい点も考慮する価値があるでしょう。個人経営の調剤薬局では経営者の高齢化が進んでいるため、事業承継という道が新たに拓けるケースも十分に考えられます。

大手チェーンの調剤薬局の特徴とキャリアパス

大手チェーンの調剤薬局のメリットとしては、まず、コンプライアンスと教育研修制度がしっかりと整備されている安心感があります。産休や育休などの福利厚生制度についても明文化されているので、就職前に各種制度について確認することで「聞いていた話と違う」といった摩擦を生むことを避けられるでしょう。

また、資金力があるため、設備面は定期的に更新される企業が多く、電子お薬手帳をはじめとする今後のICT化の波に乗った環境で業務ができるというのも魅力です。

一方で、社内ルールによって業務フローが定まっており自由度が低いことや、中小規模の調剤薬局と比べて給与が低く、残業が多い傾向もあります。給与面については、管理薬剤師、エリアマネージャー、支店長などキャリアアップを続けていくことで、中小規模の調剤薬局勤務よりも多額の報酬を得ることは可能です。しかし、それは同時にキャリアアップするにつれて薬剤師としての資格を生かした能力ではなく、マネジメント能力が必要になるともいえます。

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