ベストなキャリアをつくり出す。―薬剤師のための転職支援サービス―
自分の専門性を高めること、多職種と協働することにやりがいを感じる薬剤師に人気の病院業界。病棟業務をはじめ病院だけでしか経験できないことや扱えない医薬品がある一方で、「病院によっては当直がある」「給与が他業種と比べて低い」などの難点も。病院薬剤師に求められる役割や、業界をとりまく状況について理解を深めていきましょう。
たび重なる診療報酬のマイナス改定により、多くの病院が厳しい経営環境に直面しています。特に公立病院はその傾向が強く、全国自治体病院協議会の発表によれば、2016年度は自治体病院の6割強が赤字経営に陥っています。
こうした背景のなか、病院数は年々減少しており、2016年は8,442施設(一般病院7,380施設、精神科病院1,062施設)。2018年度診療報酬・介護報酬同時改定では、一般入院基本料7対1の病床削減、療養病床の一部が新設される「介護医療院」へ移行する見込みとなっており、病床数削減に伴って今後も病院数は減っていくことが予想されます。
一方で、病院に勤務する薬剤師数は増加しており、2014年度は4万8,980人。これは全薬剤師数の約17%に当たります。
病院薬剤師の増加の大きな要因としては、2012年度診療報酬改定における「病棟薬剤業務実施加算」の新設が挙げられます。薬剤師の病棟業務が経営面に貢献できるようになったことで、全国的に雇用が拡大。また、チーム医療のなかで活躍できることにやりがいを感じる薬剤師の応募が増え、総じて増加傾向となっています。
2016年度改定では特定集中治療室(ICU)等への薬剤師配置に加算が新設されるなど、チーム医療のなかで薬剤師にかかる期待は年々大きくなっており、今後しばらく需要は増えていくといえそうです。
かつての調剤中心の業務から、病棟業務や外来化学療法への関与、そしてチーム医療への参画と、薬剤師の業務は年々拡大しています。
合わせて、今後は地域包括ケアシステムのもと院内の枠を越えた活動も必要になるでしょう。入院時から退院までではなく、退院後の患者情報について調剤薬局からフィードバックを受けるなど、「切れ目のない薬学管理」が求められていくことが予想されます。
チーム医療における効率的な医療提供において、薬剤師の病棟業務はいまや欠かせない要素の1つになっています。近年は、ICUなどハイリスクな薬剤を多く扱う場所での薬学的アプローチが特に評価されており、専門的な知識をもった薬剤師の役割はさらに大きくなっています。
がん治療などを中心に注目を集めているのが「薬剤師外来」。医師の診察前に薬剤師が副作用のモニタリングや患者さんの薬に対する不安を確認し、診察時に医師へ速やかな情報提供を行うことで効率的な医療提供が可能になります。また、医師の限られた診察時間で対応できない部分をフォローできる、患者のアドヒアランスが向上するなどの効果もあります。
「薬薬連携」とは、患者さんの同意を得たうえで、病院薬剤師と調剤薬局薬剤師が互いに患者情報の共有を行い、継続的かつ適切な薬学管理を行うことです。多剤処方(ポリファーマシー)は、いまもなお医療業界の大きな課題ですが、調剤薬局と連携して服薬・残薬状況を的確に把握することで、その解決に寄与できると期待がかかっています。
薬歴確認
処方内容の確認
ハイリスク薬・麻薬等への対応
服薬指導
退院時指導
薬剤管理指導記録簿の作成
医薬品情報業務(DI業務)
治験業務
病棟薬剤業務
疑義照会とプレアボイド
薬剤師外来(外来がん治療など)
ICU業務
患者背景および持参薬の確認と、その評価に基づく処方設計と提案
患者状況の把握と処方提案
医薬品の情報収集と医師への情報提供
薬剤に関する相談体制の整備
副作用等における健康被害が発生した時の対応
多職種との連携
抗がん薬等の適切な無菌調製
医薬品の投与注射状況の把握
病棟における医薬品の適切な保管・管理
業務日誌の作成
など
病院薬剤師が病棟で行う業務は、おおまかに薬剤投与の前「病棟薬剤業務」と後「薬剤管理指導業務」で区分されます。
前述の通り、院内外問わず多職種との連携に対する重要度が増しています。医師・看護師・管理栄養士・ケアマネジャー・調剤薬局薬剤師など、業務に応じて連携相手はさまざまですが、病院薬剤師として働いていくうえでもコミュニケーション能力は不可欠といえます。
急性期病院ではハイリスク薬を含めた多様な薬剤を取り扱う機会が多く、専門性を高めたい薬剤師にとって人気です。その一方で当直や残業がある病院も多いため、入職前に実際の働き方について情報収集することが重要です。
慢性期病院は比較的容態が安定した患者さんが多いため、急性期病院よりは落ち着いた環境で業務が可能です。近年は慢性期病院での薬剤師介入における医療費削減効果が実証され始めており、処方提案や重篤な副作用の回避をはじめ、医療の質としても経営的な貢献としても、薬剤師の活躍の場は十分にあるといえそうです。
また、病院は他業界に比べて託児所完備の施設が多いのも魅力の1つ。業務の特性上、24時間対応の保育所を有している病院も少なくありませんので、子育て中の薬剤師にとっては心強い職場です。
調剤業務の基礎を学んだ後、病棟業務や外来業務などに移り、スキルアップをしていく病院が一般的です。
院内で勉強会を開催したり、学会や講演会への参加について支援を行う病院も多く、他業種に比べて幅広い情報や専門的な知識をキャッチアップできる環境に恵まれているといえそうです。
認定薬剤師や専門薬剤師といった資格を取得して専門性を高める、もしくはマネジメントスキルを高めて薬剤部長など管理職として活躍する人もいます。